ヴァラナシ、そこは私がインドで最も行って見たい場所だった。
牛が放し飼いにされ、自動車とリキシャが所狭しと行き逢い、そして毎朝ヒンズー教の人々が沐浴にくるガンガーがある街。。喧騒の街、バラナシ。
牛の糞がそこらへんにおちていているので、いつも踏まないよう足許を見ながら歩いていた。
街にもトイレがないから、結構匂う。本当にインド人はどこでトイレしているのかと思うくらいトイレはない。あっても男性用で女性用トイレは全然見なかった。とにかく、私は鼻炎で鼻が利かないことが、ここでも役だった。
ガンジス川沿いにはたくさんのガートがある。
その中でも北にある、有名なマニカルカー・ガート。ここにはインド各地から火葬されるため布にくるまれた死者がやってくる。
その遺灰はすべて川に流される。火葬を見守るたくさんの人々、積み上げられた無数の薪、勢いよく燃え上がる炎。
このガートの風景は、私の脳裏にはっきりと焼き付くほど印象的だった。死体をくるむ布の色の違いの理由とか、カーストによって薪の質も焼く場所も異なるらしい。
ここはネパールのパシュパティナ-トで見た火葬とは大分違う。死体に飾られる花もないし、念仏も聞こえてこない。ただ、次々と、死体を焼いている、そんな印象を受けた。
早朝のガンジス川では、淋浴にくるたくさんのヒンズー教徒でいっぱいだ。彼女たちのいろとりどりのサリーが真茶色のガンジス川の水を彩っている。
私も、その人たちに混じって、淋浴をした。排泄物や死体、なんでも混じっているその川に入ることをその時一緒に旅していた中国人女性は信じられないという目で見ていたけど、私はインド人に仲間入りできた気に勝手になって嬉しかった。
そして座禅をしながら、早朝のガンジス川に昇る朝日をみて、理由はわからないのだけど、感動して涙がこぼれた。旅をしていてこんな風に泣いたのは初めてだった。